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フロリデーション問答集

日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会・厚生労働科学研究「フッ化物応用の総合的研究」班作成

本問答集は、国内の幾つかの地域で行ってきた水道水フロリデーション普及啓発活動の中で、一般市民から出された疑問点を整理し、これらに答えることを目的に編集したもので、掲載許可をいただいています。

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A 水道水フロリデーションとは 

 

質問 A-1 「フロリデーション」とは何ですか?

答え

 フロリデーションとは一般的に水道水フロリデーションのことを指します。水道水中に天然にも含まれているフッ化物イオン(水に溶けたフッ素をフッ化物イオンという)の濃度をむし歯予防にほどよい濃度(フッ化物イオンで約1ppm)に調整する方法です1)。これは市の浄水場で管理する方法で、家庭では普通に蛇口から利用することになります。水道水の他、食塩やミルクなどのフロリデーション、という言い方もあります。

質問 A-2 「フッ化物」とは何ですか?

答え

 「フッ化物」とは天然にも存在するもので、ミネラル元素である「フッ素」が含まれている化合物のことです。この「フッ化物」は無機化合物に分類され、水に溶けると「フッ化物イオン」となって歯や骨の栄養素として活躍することができます。同じく「フッ素」が含まれる化合物として「フッ素化合物」があります。こちらは有機化合物で、水に溶けずフライパンの樹脂加工などに用いられているもので、むし歯予防には用いません。

質問 A-3  フロリデーションはいつごろから始まったのですか?

答え

 「調整による」水道のフロリデーションは、1945年、米国・ミシガン州グランドラピッズ市で開始されました。一方、「天然による」フロリデーションは地球上の生物進化の過程において太古の昔より継続して行われてきたものです。ちなみに、飲料水中の適正なフッ化物イオン濃度が発見されたのは、この天然の状態における人々の健康調査に基づいています。よって、「調整による」フロリデーションは「天然の」の仕組みをまねた方法である、と言われています。

質問 A-4  フロリデーションは、現在、何か国で実施されているのでしょうか?

答え

 2004年現在の報告によると2)、調整による水道水フロリデーションを実施している国は33か国とされています。また、天然によるフロリデーションは47か国です。調整、天然いずれかによるフロリデーション実施国をすべて合計すると60か国になり、人数として約4億500万人が恩恵を受けています。

世界のフロリデーション実施状況 実施国      人数
    調整による 33か国  約3億 5,500万人
    天然による 47か国 約  5,000万人
上記いずれかの方法(併用含む) 60か国  約4億 500万人

 世界歯科医師連盟(FDI)が実施した水道水フロリデーション調査報告によれば、1984年では2億4600万人、1998年では3億6000万の人々が利用していました3)。したがって、世界全体では水道水フロリデーションは増加傾向にあります。

質問 A-5  フロリデーション水にした場合のメリット、デメリットは何ですか?

答え

 水道水フロリデーションの地域住民にとってのメリットは、公平に、効果的に、安価(年間約100円)で、安全に安心してむし歯を予防できることです。その結果、歯の寿命を延長し生活の質(クオリティー・オブ・ライフ)が向上し、歯科医療費、医療費、介護費などの社会保障費の削減に寄与します。すなわち、個人の努力に負うことなく、水道水を利用するという小さな努力で確かな効果が得られることです。生活水準の違い、低年齢児、障がい者、高齢者、低所得者層に関係なく、すべての人を対象に平等にむし歯を予防することができるため健康格差の縮小につながります。水道料金にかかる費用より、はるかに高い医療費の削減につながることからも、住民にとってデメリットは考えられません。

質問 A-6  大人・子ども・赤ちゃん等、フロリデーション水を1日何リットル飲むのが理想ですか?

答え

 一日の理想的な水の摂取量(直接飲むだけでなく、調理などに使用して摂取する水道水を含む)は、体に必要な生理的な量とも言えますが、フロリデーションを実施していてもしていなくても同じ量です。 大人は1〜2リットル、子どもや赤ちゃんは0.5~1リットルの水が必要とされています4)。

質問 A-7 フロリデーション処理された水はどこで手に入りますか、販売していますか?

答え

 フロリデーション処理された水は、今までの水道水と全く同じように各家庭において蛇口から利用されるもので、どこかで販売するものではありません。フロリデーションの管理は市の浄水場で行われ、各家庭に配られた水道水を自由に飲み料理に利用することで、すべての市民がむし歯予防の恩恵を得ることができます。

質問 A-8  冷えていないとおいしくないのですか?

 
答え

フロリデーションによって水の味やにおいは全く変わりません。ただ、水の味は温度との関連性があり、冷えた方が美味しいものです。

B 水道水フロリデーションの効果

質問 B-1  むし歯予防効果の実績を教えてください?

答え

フロリデーションのむし歯予防効果の実績は世界中で100以上の調査により示されており、乳歯では40-50%、永久歯では50-60%の予防率と報告されています5)。ここで、むし歯予防効果50%とは次の意味です。フロリデーションを実施していない地区、または実施していない時代で4本のむし歯があったとします。フロリデーション実施により2本になったとすると、むし歯の数は1/2になった、すなわち50%減ったことになり、この数値が予防率の大きさを意味しています。またできたむし歯が悪化進行しないようにする抑制効果はさらに高く、むし歯による歯の喪失の抑制率は約80%と報告されています11、12)。世界的にむし歯の状況をみると健康格差が生じていますが,フロリデーションは地域のすべての人々に有効で、簡便、安全、安価でしかも公平な、う蝕予防を保障する社会システムです8)。フロリデーションは公衆衛生手段として優れ、これに勝るむし歯格差を解消する方法はありません。

質問 B-2  効果はいつごろから現れるのですか?

答え

 歯を丈夫にするフッ素の働きは、フロリデーションの開始とともに目に見えないレベルで刻々と進んでいきます。実際にむし歯の本数の抑制効果として表われる(統計学的に証明される)のは、乳歯で5年、永久歯で10年くらいが必要です。

質問 B-3 大人や年寄りが飲んでも効果はあるのですか?

答え
 大人や年寄りも自分の歯がある限りフロリデーション水を飲むことによる効果は続きます。高齢者の場合、歯ぐきが下がって露出した歯根表面(セメント質と象牙質)のむし歯予防に特に有効です9)。

質問 B-4 子どもは大人と同じ量でも効果があるのですか?

答え

 効果的でちょうど良いフッ化物摂取量は子どもと大人で異なります。その素量として、体重に比例した基準(目安量:0.05㎎/kg/日)が決められています。また、人が必要な水の量は体重に比例しています。例えば体重の少ない子どもは1リットルに対して大人では2リットルの水が必要です。よって、水道水中のフッ化物イオン濃度が適正であると、必要なだけ水を飲んでいれば自動的に大人も子どももフッ化物のちょうど良い量を摂取できていることになります。

質問 B-5 季節によって飲むのにムラがあるのですが、効果は出ますか?

答え

季節によって飲む水の量にある程度の変動が予想されます。しかし、その程度の変動幅があっても、それぞれ地域における年間を通した気温に対応して、一日平均飲水量がほぼ一定になるため、安全に効果的にむし歯予防ができます。

質問 B-6 フッ化物はいろいろな食品に含まれていますが、そのような食品を食べればよいのではないですか?

答え

なるほど、フッ化物を多く含む食品、例えば海藻や骨ごと食べる小魚やお茶などを選んで毎日たくさん飲食すれば、それでもよいように思われます。しかし、そのような献立を立てると栄養素に偏りができてきて食生活上好ましくありません。また、フッ化物の体内吸収率は食物からよりも飲料水からの方が高く、水道水フロリデーション地区では一日全体で摂取するフッ化物のうち約60%は飲料水から摂っていることになります10)。なお、日本人にとってほど良いフッ化物の摂取量は大人(体重60kgとして)で3mg/日、子ども(体重20kgとして)では1mg/日、とされています29)。

質問 B-7 フロリデーション水の効果的な飲用時間帯はありますか?

答え

 特に、フロリデーション水の効果的な飲用時間帯があるという報告はありません。しかし、血液中のフッ化物イオン濃度をできるだけ安定した状態にするためには、一日を通して少しずつ頻回にフロリデーション水の含まれた飲食品を摂取することが良いといえます。

質問 B-8 フロリデーション水のうがいだけでも効果はありますか?

答え

 うがいだけでも頻回に行えば歯の表面から作用する効果が期待できると思われます。しかし、最大の効果は毎日フロリデーション水を飲んでいることによって得られことが分かっています。フロリデーション水を飲むことによって、特に小児期で歯の形成期には全身効果が得られ、また生涯を通して歯の表面から作用する局所効果も継続させることができます。なお、1日1回とか1週間に1回、高濃度フッ化物溶液でうがいをすることで有効な効果を得ることができますが、この場合はフロリデーション水の数百倍(300から1,000倍)濃度のフッ化物溶液を用います。

質問 B-9 洗口とフロリデーション水とでむし歯予防の効果に違いはあるでしょうか?

答え

 洗口(フッ化物洗口)では歯の生えた後に歯の表面から素フッ化物が作用しますが、フロリデーションでは歯の生える前と歯の生えた後の両方で効果が発揮されます11-14)。すなわち、フッ化物洗口は局所効果、フロリデーションは全身効果及び局所効果として現れてきます。有効性はフッ化物洗口よりもフロリデーションの方が大きく、またフロリデーションの場合には乳児から高齢者まで全ての年代で分け隔てなく、安全にかつ継続的にフッ化物の効果が得られる特徴があります。

質問 B-10 フロリデーション実施後もフッ化物配合歯磨き剤や、フッ化物洗口や、歯面塗布の必要はありますか?

答え

 フロリデーションを導入したうえでも、フッ化物配合歯みがき剤を継続して使用することが勧められます。フロリデーションによる全身応用と、フッ化物配合歯みがき剤による局所応用の組み合わせが最大効果につながります。さらに加えて行うフッ化物洗口やフッ化物歯面塗布は、特にむし歯になりやすい人に限って勧められます15)。

質問 B-11 むし歯の原因となる糖分(ジュース等)と一緒にフッ化物を摂取するとどうなりますか?

答え

 糖分とフッ化物を一緒に摂取すると、このようなことを繰り返したとすると、糖分はむし歯を作る原因として作用し、一方、フッ化物はむし歯から歯を守る効果をもたらします。すなわち、糖分とフッ化物の両者は反対方向で作用しあいます。結果として、どっちの作用力がより強いかでむし歯になるかならないかが決まります。このような結果は、糖分とフッ化物を一緒に摂取した場合も、別々の時間に摂取した場合も同様です。そして、糖分摂取量とフッ化物摂取量が異なるいろいろな国々の比較から、「フッ化物の摂取による好影響の方が、糖分摂取により悪影響をおさえる」と考えられます。そのような作用の説明はそれとして、糖分の摂取量は控えめに、フッ化物の摂取は適切に、両方の面から正しい習慣を守ることが大切です。

質問 B-12 人体に入った時、フッ化物はカルシウム的(と同じ)効果がありますか?

答え

フッ化物はカルシウムやリンと一緒に協力して歯や骨の栄養になりますが、フッ化物だけたくさん摂取しても、またカルシウムやリンだけをたくさん摂っても充分な効果が発揮できません。いくつかの異なる元素が一緒に協力して初めて丈夫な歯や骨を作ることができます。厳密には、フッ化物はフッ化物として、カルシウムはカルシウムとしての働きがあると考えるべきで、フッ化物にカルシウム的効果はありません。

質問 B-13 フロリデーション水を利用してもむし歯になる人がいるのはなぜですか?

答え

 確かにどんな健康法、予防法も100% の効果があるものはないでしょう。フッ化物は歯を丈夫にするミネラル栄養素ですが、栄養が十分であっても他の生活習慣が悪い、例えば糖分を摂り過ぎているとむし歯になる人もでてきます。フロリデーション水を利用しているうえで、その他にバランスのとれた食事や歯科医院で行う小窩裂溝の填塞処置(シーラント)を受けることも勧められます。フッ化物だけというむし歯予防はないことを自覚し、また逆に、日常衛生習慣がいくらしっかりしているようでも、フッ化物だけ用いないという習慣では大変に損をすることを知りましょう。実際、水道水フロリデーションではむし歯になる数を約半数にすることができます。

質問 B-14 水道水を直接飲みませんが、フロリデーションの効果は減少するのですか?

答え

 フロリデーションの水道水を直接飲まない場合でも、この水道水でご飯を炊いたり、味噌汁を作ったり、調理をしたりして、これらの飲食物を摂取すればむし歯予防効果が期待できます。実際、得られるむし歯予防効果の程度は、飲み物と食べ物に含まれている全体のフロリデーション水の摂取量に比例します。なお、フロリデーションされていない水、ボトル水などを飲用していると、その分だけむし歯予防効果は減少します。そこで、米国では都市の水道をフロリデーションするとともに、ボトル飲料水もフロリデーションする地区が増えてきています。

質問 B-15 水が苦手なので、お茶などではダメでしょうか?

答え

そもそもお茶(紅茶やウーロン茶も同様)にはフロリデーション水道水と同じくらいの濃度のフッ化物イオンが天然に含まれています16,17)。一般に子どもはお茶を常用しませんが、常用している大人の場合、フロリデーション水でたてたお茶であれば、フロリデーション水をそのまま飲んでいる人以上の効果が得られるでしょう。

質問 B-16 加熱した場合、また一定時間が経過した場合、フロリデーション水のフッ素の効果は失われるのでしょうか?

答え

加熱によっても、時間がたっても、フロリデーション水のフッ化物の効果は変わりません。加熱においては、普通に水道水を沸かした場合、水分が10%程度蒸発したとして0.8ppmのフッ化物濃度はおおよそ0.88ppmになります。フロリデーションの際のフッ化物濃度設定はこのような調理等による濃縮も考慮した上で安全な濃度に設定されていますので、安心して使って下さい。ちなみに、水道水の消毒として用いられる塩素は加熱や時間経過とともに除去され(25℃で気化)、その効果が失われ減少されることがありますが、フッ化物の場合、効果が失われることはありません。

質問 B-17 フロリデーションにむし歯予防以外の効果はありますか?

答え

 特別に調整されたフッ化物薬剤による療法により骨密度が増加し、骨折の予防になる、との報告18)があります。また、2004年に米国で発行された骨の健康と骨粗鬆症に、フッ化物は骨に対して元来有益性のある栄養素として記載されています19)。しかし、フロリデーション水道水によって骨の健康が増進されるかどうかの結論は調査により一貫しておらず、引き続き詳しい調査が行われています。骨に対する栄養素としてフッ化物が効果的に作用するという期待がありますが、現段階では、むし歯を予防する効果に比べると骨に対する効果に関する根拠がまだ弱いため、さらに研究データの積み重ねが必要とされています。

質問 B-18 浄水器によってフロリデーション水のフッ化物濃度が薄くなると聞きましたが、浄水器を使用しても大丈夫ですか?

答え

 一般家庭で蛇口に取り付ける現在のタイプの浄水器では、フロリデーション水のフッ化物濃度を下げることはありません。しかし、工業用の浄水装置にはフッ化物を除去するような型のものがあり20,21)、それらを通して水道水を利用した場合には、むし歯予防効果が減少するでしょう。フロリデーションのむし歯予防効果の減少にならないためには、一般家庭用の浄水器で活性炭、不織布、中空糸フィルター仕様のものを使用することが勧められます。

質問 B-19  現在、家庭で水道水をアルカリ性と酸性とに分ける装置を設備して飲んでいる場合はどうなるのでしょうか?

答え

 アルカリイオン整水器の使用によりわずかにフッ化物が除去されますが、フロリデーションのむし歯予防効果に及ぼす影響は小さいと考えられます21)。水道水をアルカリ性と酸性に分ける機器に、「アルカリイオン整水器」があります。この場合、飲用に用いるのはアルカリ性の水です。アルカリイオン整水器の仕組みは、整水器の中が隔膜で左右に分離されており、分離された槽内に陰(マイナス)極、陽(プラス)極の電極が設置され水を電気分解します。通水された水は、最初に整水器の浄水機能によりろ過(ろ過材:活性炭等)され、次にカルシウム剤(乳酸カルシウムなど)を溶かして電気分解されます。電気分解されると、陰極(マイナス極)側に「アルカリイオン水」ができ陽極(プラス極)側に「酸性水」ができるようになります。陽イオンであるカルシウムイオン、マグネシウムイオンなどのミネラル成分は隔膜を通して陰極に、陰イオンである塩化物イオンや炭酸水素イオンなどは陽極に引き寄せられます。この時、陰イオンであるフッ化物も陽極に引き寄せられると考えられます。事実、フッ化物濃度を0.8ppmに調整した水道水をアルカリイオン整水器に通水させた時 pH9.5以上において、約0.1ppmのフッ化物濃度の減少が報告されています。しかし、この程度の濃度減少によりむし歯予防効果が減少する可能性は低いので、アルカリ整水器の使用を継続しても問題ないと考えられます。

C. 水道水フロリデーションの安全性

質問 C-1 フロリデーション水は、人によって身体に合う、合わないがありますか?

答え

 フロリデーション水が人々の健康に悪影響をもたらすことはありません。適量のフッ化物が安全であることは、異なる条件のたくさんの人々を対象に調べられた結果に基づいています。例えば個人差が問題になるアレルギーについての調査は、ヒトと動物でフッ化物による皮内陽性反応を確証するケースは一例も見られず、米国科学アカデミーやWHOはフロリデーションによるアレルギー反応の証拠はない、と結論しています22)。その他全身の健康状態に関しても、フロリデーションが特定の条件にある人に悪影響があるとの証拠はありません23)。

質問 C-2 年齢、病気等に関係なく、だれがフロリデーション水を飲んでも大丈夫なのですか?

答え

 水道水フロリデーションは年齢や病気に関係なく利用できます。安全性の調査は乳児から高齢者まで対象として行われてきています。また、フロリデーション水の飲用が心臓病や腎臓病の原因であるとか、悪化させるとの報告はありません24,25)。

質問 C-3 フロリデーション水を飲み続けることにより体に副作用が現れることはないでしょうか?

答え

フロリデーション水を飲み続けても体に副作用が出ることはありません。水道水フロリデーションは飲料水中のフッ化物イオン濃度を適正に調整するもので、濃度が適正である限り毎日飲み続けてもフッ化物の摂り過ぎにならない方法です。もちろん、いかなる薬や物質、栄養素であっても、過剰に摂り過ぎれば生体にとっては有害です。食塩も摂りすぎたら高血圧の原因になり、フッ化物の摂り過ぎでは斑状歯の原因になります。いずれも安全性の根拠に適量摂取が前提となります。
 フロリデーションのフッ化物は生体内で生理的な代謝を経て処理されます。吸収されたフッ化物のうち、骨の成長や歯の形成に必要な量を貯留し、小児では約20%が尿として体外へ排泄されます。また成人では吸収されたフッ化物の約50%が排出されます。フッ化物は増齢的に骨への沈着量が増加していきますが、これは生理的なもので体の悪影響が起こることはありません。なお、WHO(世界保健機関)とFAO(食品農業機関)はフッ化物を必須栄養素26)、また米国公衆衛生局は有益元素27)として位置付けています。そして米国28)、EU(欧州連合)では、1日にとるべきフッ化物の適正摂取量の数値を定めています。日本では、日本口腔衛生学会が「ライフステージに応じたフッ化物摂取基準」を公表しています29)。これらの基準に従うと、成人(60kg体重とすると)で3mg/日、小児(20kgとすると)で1mg/日がちょうど良い摂取量とされています。日本においても、米国やEUと同様に、フッ化物を健康の維持増進に欠かせない栄養素として認知すべきです。

質問 C-4 長期間のフロリデーション水の使用で、フッ化物は体に蓄積しますか。蓄積するとどうなりますか?

答え

長年にわたってフロリデーション水から摂取したフッ化物は骨と歯の構成成分として蓄積し、軟組織には蓄積しません。フッ化物は骨と歯を作っているミネラル成分として役立ち、フロリデーション水を生涯飲用し続けても体に悪影響はありません30)。
体内でフッ化物が蓄積する部位は骨と歯です。歯や骨の成長期にある小児期で蓄積率は比較的高く約80%、一方、骨の成長も止まり歯の形成・石灰化も終了している大人では、吸収されたフッ化物の約50%以上が尿中に排泄されます。また、摂取量が少なくなった場合には、前もって骨に蓄積されていたフッ化物が血中に放出される場合もあります。このように、フッ化物は私たちの身体で成長に合わせて吸収、排泄、蓄積が生理的にコントロールされている栄養素であるということができます。一方、天然井戸水などの事例で過量(フロリデーション濃度の約10倍以上)のフッ化物を含む水(8ppm以上のイオン濃度)を10年間以上にわたって利用している地域では、成人の約10%にレントゲン像で確認できる骨の硬化が確認されています。この程度では痛みなど、生活に支障の出る症状はありませんでしたが、さらに高濃度の症例では骨と骨をつないでいる靭帯の石灰化が進行し、運動障害が現れることが報告されています31)。しかし、適量のフッ化物イオン濃度で行われるフロリデーションに関しては生理的な蓄積はあっても体の悪影響につながる心配はありません32)。

質問 C-5  乳児がフロリデーション水を飲んでも問題ないでしょうか?

答え

乳児がフロリデーション水を飲んでも問題ありません。米国医学研究所は、1日に摂取する総ての飲食物からの合計として、乳児期から全年齢層別にフッ化物の上限摂取量の基準値を発表しています。その基準に従って計算すると、乳児期(0~11か月)にフロリデーション水で溶かした粉ミルクだけで保育する場合には、「軽度の斑状歯」を起こす可能性がある、とされています。しかし、実際の調査結果において、フロリデーション水で調整した粉ミルクを飲ませたことによる健康上の問題は起きていません33-36)。また、「軽度の斑状歯」は健康上も、見た目の(審美的)問題にもならないことから、米国疾病管理センターは乳児がフロリデーション水を飲んでも健康上の問題ない、と公表しています。なお、「斑状歯」が生ずるリスクを最小にするためには、乳幼児期に歯磨き剤を用いる場合に、小児用として市販されているフッ化物低濃度歯磨き剤を選ぶこと、1回の使用量を小豆の大きさ程度とすることが大切です。
(*軽度の斑状歯は病気の分類に入れるべきでないとの判断から「歯のフッ素症歯」を使わないこととした。)

質問 C-6 水道水フロリデーションによる母乳への影響はあるでしょうか?

答え

母乳への影響はありません。 母乳中のフッ化物は母親のフッ化物摂取量を反映しますが、母親の血液中濃度よりも低くなっています。母乳中のフッ化物濃度は0.007~0.011ppmで、乳児は母乳を一日約1リットル飲むことから、フロリデーション地区(1ppmFとすると)では母乳を通じて約0.01mgのフッ化物を摂取していることになり、これは歯を丈夫にする一助になっている範囲の量です26)。

質問 C-7 フロリデーション水を料理などで煮詰めるとフッ化物の摂りすぎになりませんか?

答え

料理などで煮詰めても摂りすぎにはなりません。料理などで煮詰めた場合、水分は蒸発して少なくなります。そして、その分だけフッ化物の濃度は高くなります。しかしながら、フッ化物そのものは変化しませんので、フッ化物の量は煮詰めた前後で変化はありません。出された料理を全て食べたとして、摂取するフッ化物量は水分を含め食材として用意された全体量と同じです。水道水フロリデーションは料理の過程を含めてちょうど良いフッ化物摂取量になる方法です。

質問 C-8 フロリデーション水からフッ化物を摂りすぎたらどうなりますか?

答え

フロリデーション水を日常生活の範囲内で摂取しても、濃度が適正であればフッ化物の摂り過ぎにはなりません。中毒が起こる心配は、誤って多量のフッ化物を摂取した場合に限ります。フッ化物の急性中毒が発現する目安量(見込み中毒量)は5mgF/kg(体重)37)で、体重20kgの小児では100mgになります。計算上、見込み中毒量に相当するフッ化物をフロリデーション水(0.8ppmF)で摂取することは、一度に125リットルの水を飲んだことに相当します。通常小児が摂取する水分量は一日単位で約1ℓですから、フッ化物のとり過ぎで中毒になるようなことは実際には起こり得ません。また、天然高フッ素地区で報告されたことのある慢性中毒、「問題となる斑状歯(歯のフッ素症)」と「骨のフッ素症」の可能性は、適正濃度が管理されるフロリデーションによって生ずることはありません。市の浄水場で管理される水道水は日本の「水道法」で定められているフッ化物濃度(0.8ppm以下)であり、この「水道法」を守っている限り慢性中毒になることは決してありません。

質問 C-9 問題となる斑状歯が生ずるフッ化物の摂取量はどのくらいですか?

答え

 問題となる斑状歯(中程度以上)はフロリデーションの 2 倍以上高いフッ化物濃度の場合に生じます38,39)。わが国の水道法で決められたフッ化物濃度 0.8ppm以下のフロリデーションでは、問題となる斑状歯は生じず、薄い白濁を特徴とする軽微度の者が 10%程度みられます。この程度の斑状歯は歯が白く見えるだけで、美容上も問題となりません。
生ぜず 生じず 

質問 C-10 問題となる斑状歯はどうして起こるのですか?

答え

 問題となる斑状歯(歯のフッ素症)は、①フッ化物イオン濃度の高すぎる飲料水を、②歯が形成される期間中(生後~7歳頃)に、③継続して飲用することで発現します39)。歯のフッ素症とは、過量のフッ化物摂取によって歯の形成が阻害され、表面に白色、まれに黄褐色の斑(まだら)模様を生じた歯のことです。歯のフッ素症が生ずる必要条件として、上記 3条件が重なっていることがあげられます。すなわち、歯の形成が完了している成人では、高濃度フッ化物の飲料水を飲用していても歯のフッ素症になることはありません。

質問 C-11 フロリデーションはがん発生の要因にならないでしょうか?

答え

 今までに行われた膨大な数の動物実験や人の疫学健康調査を基に、WHOをはじめとする医学研究機関によって、適正なフッ化物イオン濃度で管理されるフロリデーションでがんの発生リスクを高めることはない、と繰り返し、一貫して結論されています40)。フロリデーションに関する最新の分析報告(システマティック・レビュー:多数の論文を系統的に分析評価したもの)においても、いかなる種類のがん罹患率、がんによる死亡率とフロリデーションとの間には関連がないと結論づけられています41)。この分析では、骨肉腫と骨がん、甲状腺がんを含む全身の部位のがんが対象となっています。

質問 C-12 フロリデーションによる腎臓疾患への影響はありますか?(参照:質問 C-2)

答え

 フロリデーションが、腎臓疾患患者への影響を及ぼすことはありません25)。毎日摂取されるフッ化物の約50%は、腎臓の働きによって24時間以内に体外に排出されます。天然水に4~8ppmFのフッ化物濃度を含む飲料水を長期間にわたって飲んでいた人々を対象とした米国の疫学研究では、フッ化物による腎臓疾患への影響は認められていません。その他、フロリデーションによる腎臓疾患、腎臓や脈管系の疾患の死亡率への影響は認められませんでした。また、腎機能が低下した人に、歯のフッ素症や骨のフッ素症が発症したという報告も認められていません。腎臓疾患患者の多くは、腎臓透析に依存した治療を行っています。しかし、その治療で利用される透析液には、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、フッ化物などのミネラルが過剰にならないように調整されています。

質問 C-13  フロリデーションによるダウン症、奇形、出生異常の可能性はありますか?

答え

フロリデーションとダウン症との間に関連性があることを示す科学的な証拠はありません42)。イギリスや米国において多くの疫学調査が実施されていますが、フロリデーションとダウン症児の発生率との関連性や、その他の先天異常(心臓・循環器系の異常、尿道下裂、水頭症、わん曲足など)との関係は否定されています。これら多くの調査や研究の結果を踏まえて、1991 年に米国公衆衛生局(PHS)は「フッ化物の利益とリスクに関する再評価」を刊行し、フロリデーションは先天異常やダウン症の発症に影響しないと公表しています。

質問C-14 フロリデーション水が自然に還った時どのようになるのですか?

答え

 フロリデーション水が自然に還った時、水道に含まれていたフッ化物は自然環境に存在しているフッ化物とともに、そのまま自然界に溶け込むことになります。水道水フロリデーションでは自然界にある岩石から生成したフッ化物が利用されています。よって、フロリデーション水が自然に還った時には「天然のフッ化物」と「フロリデーションのフッ化物」との区別もありません。土壌中には天然に約280ppmのフッ化物が含まれています。フロリデーションによる0.8ppm程度のフッ化物が土壌中に入ったことで自然環境に影響を与えるようなことはありません43)。野菜など農作物にも影響を与えることもありません。また、海水中には天然に約1.3ppmのフッ化物が含まれています。これは太古の昔から、地下水や温泉水、河川を通して地表のミネラルとともにフッ化物が海に流入し、一方、海中の生物、魚、貝、海藻などの構成物として取り込まれ、海底に沈んだり、陸に引き上げられたりしています。その結果、海水中のフッ化物イオン濃度は人間が生まれた時代からもずっと平衡状態が保たれているとされています。ここで注目したいことは、我々が水道水フロリデーションを実施してもしなくても、自然界のフッ化物総量は変わりません。

質問 C-15 フロリデーションによる産業への影響はありますか?

答え

世界中の多くの国々で、農業、工業、食品産業などいろいろな生産活動が行われていますが、フロリデーション水がいずれかの産業に対しても何らかの悪影響を及ぼしたという報告はありません。観光産業の盛んな香港、シンガポール、ディズニーランドのあるロスアンゼルス市では全域でフロリデーションが実施されていますが、フロリデーションによって観光や経済に悪影響が現れたという報告はありません。わが国では、京都山科地区で13年間の実施例があります。その結果、醤油製造、製氷、清涼飲用水、染色、レンズ研磨に対しても、フロリデーションの影響はみられなかったと報告されています44)。

質問C-16 WHOの報告に「フロリデーションは6歳未満の子どもに禁忌」とありますが本当ですか?

 
答え

 水道水フロリデーションについて「6歳未満の子供には禁忌」という説明は、WHO報告ではもちろん、世界中のどこの医学・保健専門機関の報告においてもみることはできません。逆に、この表現はもっとも特徴的なフロリデーションの恩恵を無視していることになります。実際、WHOの報告45)において、フロリデーションは「年齢、社会経済、教育、個人の動機、歯科医療供給状況、等に関わらず」すべての地域住民にむし歯予防効果が行き渡る方法であり、これは水道水フロリデーションの利点であると説明されています。そこには同時に、フロリデーションは世界の150を超える医学・保健専門機関によって推奨されていることが示されています。

D 水道水フロリデーションの公共政策

質問 D-1 「水道水を飲まない」という人に、フロリデーションの導入を説明する方法がありますか?

答え

 日本の水道水は安全で安心できる飲料水であり、フロリデーションを実施したならばむし歯予防の恩恵が加わることを知ってもらえるようにして、水道水の利用を勧めましょう。日本の水道水は「水道法」によって定められた50項目の水質検査に合格し、そのうえで各家庭に配水されている安全性の高い飲料水です。また費用の面からみると、1リットル・ボトル飲料水のお金(約100円)で約1トンの水道水が買えますから、水道水はボトル水の約1,000分の1の安さになります。なお、飲み水として飲用する他、料理や下ごしらえでフロリデーション水を使えば、その分のむし歯予防の恩恵にあずかれます。残念ながら食生活で全く利用しない人の場合、費用負担だけがマイナスになると予想されますが、子どもたちの歯の健康のため、むし歯予防に困難を伴うさまざまな立場の人たちへの協力金と考えるのはいかがでしょう。むし歯になるリスクは時間とともに変化し、一生のうちでリスクが大きい時もあれば小さい時もあります。予防に終わりはありませんから、フロリデーション水を今は飲まない人も、自身でむし歯予防をしにくくなった時に備えて年間100円程度の負担をすることの意義を理解してもらいましょう。

質問 D-2 歯の無い人にフロリデーションは必要ですか?

答え

 歯の無い人にはむし歯予防をする対象が無いので、フッ化物は必要ないと言えそうです。しかし、歯を失った悲しみは、歯を失った人達が一番よく知っています。そのような悲しみは次世代を背負う人達に与えなくて済むよう、水道水フロリデーションを支援することは、良き市民としてのありかたともいえましょう。水道水フロリデーションは、健康格差を縮小できる最良の公衆衛生的な歯科保健対策です。公衆衛生的対策の精神は相互扶助による福祉に通じるものです。なお、フッ化物は歯ばかりでなく骨も作っているミネラル元素です。

質問 D-3 フロリデーションの実施には反対意見もあるようですが、どんな意見ですか?

答え

 代表的な反対意見46)として、フッ化物は毒物でむし歯予防効果は無い、という言い方があります。しかしそれらは、効果と安全性を繰り返し発表している医学専門機関の結論を無視した誤認です。水道水フロリデーションは健康に良い水質、適量のフッ化物を市民に提供する方法であり、そのむし歯予防効果と安全はWHOをはじめ世界の150を超す医学保健の専門機関によって、一貫して一致して承認されているものです。ところが、フロリデーションに反対する人はそのような事実を知らない、または信用できない、ということを理由にします。また、どのような水を飲むかは個人選択の問題であることを理由に反対していることもあります。しかし、地域にひとつしかない公共水道水は人々に共通した適正条件で提供されるべきものです。日本でフロリデーションを実施するとすれば水道法の水質基準:フッ化物イオン濃度0.8ppm以下、を順守することになります。また、フロリデーションを実施するかしないかは市議会の合意に従うものとなりますが、このような健康つくり政策が市議会で決定されたならば、決定事項に従って、個人の好みや個人の意見よりも公共の福祉が優先されることになるでしょう。

質問 D-4 フロリデーションを理由なく反対する人をどのように説得するのですか?

答え

 フロリデーションに反対する人は、理由なく行動しているわけではなく、それなりの理由があると思われます。政治的信条や特定の宗教観に基づいて反対する人達の場合、その価値観を変えることはかなり困難です。しかし、誤った情報で人々が誤った判断をしないように、常に正しい情報の提供をすることは基本的に必要なことです。さらに根本的な方策として、様々な情報に対し人々が正しい判断が出来る能力(健康リテラシー)そのものを向上させることも必要です。また、ある政治学者(ソヴェッロ)ら47)は政策を社会に定着させる為の7つのルールを提示しています。①パートナーとして人々を受け入れ連携すること、②注意深く計画し、活動を評価すること、③人々の特定の懸念に耳を傾けること、④正直で、率直で、公明正大でいること、⑤信頼できる情報源を持って活動すること、⑥メディアの要望に答えること、⑦明確にしかも思いやりを持って話すこと。フロリデーションという健康政策を社会に受け入れてもらうためには、説明する立場の者がこれらのことを肝に銘じておく必要があります。
 理由も示さず、好き嫌いだけから反対している人と対面した場合、その判断にとっていくら重要な事実誤認があろうとも、どんな説明も聞き入れない、話もしたくないという状況に遭遇することがあります。少し距離をおいて省みると、反対している人に特有な興味、価値観があるはずです。その興味や価値観を理解したり共有したりできたら、会話の機会を作れる可能性が生まれてきます。根気よく、時間をかけて、遠回りの道でも探しながら、反対する人と会話できるチャンスをうかがうことが必要と考えられます。そして、反対する、その人の理由をなんとかして聞き出すことが次の展開につながるものと思われます。

質問 D-5 フロリデーションに関して、外国でも「賛成派」と「反対派」の攻防が続いているって本当ですか?

答え

真の意味での医学的・学術的攻防ではありませんが、社会的、政治的な背景から「賛成派」と「反対派」が生ずることがあり、論争は存在しています。そのような論争の意味を理解するうえで、次のような事例が参考になるでしょう。米国で、ある宗教の影響力が強い地域でのことですが、今日では科学者たちに広く認められているダーウィンの「進化論」について、これは誤りである、疑問点がある、ということで論争が今も継続しています48)。この反対派の理論に耳を傾けると、生き物は神様が創造したのだからダーウィンの進化論は誤っているというもので、裁判さえ起こしています。当然、科学者は化石や地球科学の事実を積み重ねて進化論を説明しているのですが、永遠と決着がつかずいわゆる「攻防」といえる現象が継続しています。このような進化論だけでなくいかなる課題でも、世の中のすべての人がまったく同じ意見を持つという状況はまずありえません。科学的に否定された意見だとしても、すべての課題に「反対派」が存在するのも事実です。
問題は、公共の健康政策についてどちらの方針に決定すべきかが問われた時の判断基準が、市民の皆さんに共有されているかどうかです。米国の最高裁判所は、一般の人々が理解するのに困難な科学領域の問題に対して、証言の信頼度に関する4つの判断基準を提示しています50)。すなわち、①専門家の理論あるいは技法を科学的方法で確認したか、②査読(論文の診査)制度に沿った論文であるか、③正しい実験計画であるか、④その理論や技法が正当な科学団体に広く認められているか、が挙げられています。これら4つの項目は専門機関・学会の見解を尊重するということです。この意味で、WHOをはじめとする世界の150を超す医学保健の専門機関が合意・賛同している事実から判断して、フロリデーションは科学的な根拠にもとづいた信頼度の高い公衆衛生施策であるといえます。

質問 D-6 フッ化物の有効性や安全性をどのように理解していただくのですか?

答え
 
 フロリデーションの予防効果や安全性を市民の皆さんに広く理解もらう方法として、いろいろな工夫が考えられます。① 知識の啓発:歯科医院での保健指導、講演会、パンフレットや冊子、ポスター、インターネットでのホームページ、人形劇など、② フロリデーションの体験:フロリデーション水の試飲体験、フロリデーション先進国への研修など、があります。これらの中で、フロリデーション水の試飲体験は具体的で印象的なので、同時に提供される知識の受け入れに有効だと考えられます。さらには、テレビ、新聞、雑誌などで、フロリデーションを特集して報道してもらうことも効果的だと思います。
むし歯予防の大切さを訴えることの他、市民に提供されるべき知識:フロリデーションの科学については以下の5つの点を軸にしておくことが良いと思います。
① フッ化物は自然環境物質である。
② フッ化物はヒトの健康に有益なミネラル栄養素である。
③ フッ化物応用によるむし歯予防方法の危険説について、その誤りが解明されている。
④ 国内外の専門団体がフッ化物応用によるむし歯予防の方法を推奨している。
⑤ フロリデーションはじめフッ化物応用方法は長期間、多地域での実績がある。

質問 D-7 フロリデーション水は飲みたい人が飲めばいいのではないでしょうか。吉川市全体に一律、フロリデーションを給水する必要はないのでは?

答え

 フロリデーションを市の水道に導入するかしないか、どちらにしても、水道水の水質条件が市全体で一律のものとなることは、どこの市町村においても同様なことです。ひとつしかない公共施設を運営する時の原則と言えます。そして市の水道水を利用する権利はすべての市民が平等に持っています。よって、市が水道水フロリデーションを実施しない場合、またフロリデーションを実施することになった場合、いずれにしても、それを望む市民にも望まない市民にも一律に給水することになります。なお、飲みたい人には家庭用フロリデーション装置を設置する、あるいはフロリデーションされたボトル水の配布を継続する、飲みたくない人の家庭にはフッ化物除去装置をつける、などの案も考えられますが、一律給水よりコストや技術的管理などの点から問題があり、現実的ではありません。どちらの水にしたいかを、自分の健康も他の人の健康も、現在の健康も将来の健康も、想像力を働かせて決めたいものです。殆どの人が経験しているむし歯という病気を、歯の健康格差が生じないように、みんなで助け合って予防していきたいという考え方に基づいている方法が水道水フロリデーションです。

質問 D-8 国や県はなぜ、フロリデーション実施に向けての法律や条例の整備をしないのですか?

答え

 日本でフロリデーションを実施する際に関連する法律に「水道法」があります。これには、水道水のフッ化物イオン濃度は0.8ppm以下、となっています。米国やオーストラリアの幾つかの州ではフロリデーションをしなければ上水道として認められない、という強制的な法律もあります。しかし、わが国ではフッ化物イオン濃度の上限が決められているだけです。日本ではこの「水道法」に従う範囲でフロリデーションを行うことができます。さらに今後、諸外国の例のごとく、国の補助金制度などが明記され支援体制の強化された法律に整備されるようになることが期待されます。そのためにも、日本でフロリデーションが実施され、複数地域での実績が積み重ねられていく必要があります。

質問 D-9  厚生労働省のフロリデーションについての見解を教えてください?

答え

 水道水フロリデーションについて、平成12年12月6日、当時の厚生省において健康政策局(歯科保健課)と生活衛生局(水道環境部水道整備課)との間で以下の合意がなされています49)。「・・・フッ化物の全身・局所応用いずれも適切な方法であれば有効かつ安全であることが内外の専門機関で確認されていること、日本歯科医学会もフッ化物利用を推奨していることを踏まえ、自治体から、水道水質基準(0.8mg/l以下)内でのフッ化物添加について技術支援の要請があれば、水道事業者、水道利用者、地元歯科医師会等の理解等を前提に、歯科保健行政の一環として応じていく」、というものです。

質問 D-10 日本歯科医師会や県の歯科医師会に対して、フロリデーション実施に向けどのように働きかけるのですか?

答え

 フロリデーションの実施には、専門学術機関である日本歯科医師会、県の歯科医師会の一致した支援が不可欠です。そのためにまず、地元の歯科医師会のメンバーが一致して協力し、県の歯科医師会に働きかけを行っています。日本歯科医師会に対しては、歯科大学、日本口腔衛生学会、NPO法人日本むし歯予防フッ素推進会議などとの共同歩調をとりながら働きかけを行っており、今後いっそう積極的に取り組むべきと考えます。

質問  D-11 日本でフロリデーションを実施しようとしている地区が何か所かありますが、実現できない理由は何ですか?

答え
 
 日本でフロリデーションが実施できていない理由は、国民がフロリデーションに対する正しい情報を知らされていないことにあると思われます50)。例えば、① フロリデーションはWHOなど150以上の世界の医学・保健専門機関によって推奨されていること、② 現在、世界で約4億人の人々に恩恵を与えていること、③ 生活条件の違いを超えたすべての市民、乳幼児から高齢者まで全ての人に有効であること、などの情報が国民に殆ど知らされてきませんでした。フロリデーションに関する事実を知りそれらに基づいた市民の皆さんの支持があれば、市議会での合意もスムースに得られるものと考えられます。また、フロリデーションは個人選択の問題でなく、地域選択の問題とされています。ところが、むし歯予防の方法を社会の支援や環境の改善から考え、福祉や公共の意識に基づいて考える、という姿勢はわが国ではまだまだ一般的でありません。さらに、「むし歯は痛くなってから歯科医院に行けばよい」という古くからの意識が優先され、「歯の健康は予防から」との認識には至っていない一般的な現状があります。市民だけでなく歯科医師自身も意識改革が迫られていると言えます。そしてもっとも根源的な問題として、国民の健康、基本的人権を守るための政策を立案する政府の責任、その医学的・学術的根拠を提出する学会や大学の責任も問われているのだと考えます。市民、議会、歯科・医科専門学会、大学、国、これらすべての関連部署が連携を取り合っていくことが必要です。フロリデーションが実施できていない日本の現状は、それら連携部署のどこかが欠けているのだと考えます。
参考とすべきフロリデーション先進国の事例がたくさんあります。すでにフロリデーション30周年記念を迎えた韓国では、2000年制定の「口腔保健法」に水道水フロリデーション事業の条項が明記され、またバス・列車等の交通機関にフロリデーションの広告を政府自らが掲載しPRに努めている等、歯科医師会・大学等の専門団体及び国が一体となって積極的に啓発活動を行っています。米国や英国、オーストラリアなどでも同様に、フロリデーションに関する科学的知識の啓発活動が地道に展開されてきています。わが国もこのような先進国の実際を見習うべきと考えます。

質問 D-12 フロリデーションを中止した国があるそうですが、理由は何ですか?

答え

技術的、政治的な理由から中止された例はありますが、医学的に問題(害)があったとして中止した国はひとつもありません51)。例えば、東ヨーロッパと中央ヨーロッパで、1989-90年に鉄のカーテンに幕が降ろされると同時にフロリデーションが中止されました。中止理由は、実施されていた多くのフロリデーションシステムは設備が時代遅れであったこと、フロリデーションの利益について関係者の知識不足があったことなどから正しく機能していなかったためです。また、スイスのバーゼル市は、2003年にフロリデーションを中止することが決議されました。バーゼル市は、水道水フロリデーションと食塩フロリデーションを併用する唯一の都市でしたが、1990年代半ば頃、市内でのフッ化物添加食塩流入防止システムに支障が生じたため、その後の調査でバーゼル市民がフロリデーションの飲用と食塩の両方からフッ化物を摂取していることが明らかになりました。フッ化物の利用で全身応用(水道水フロリデーション、食塩フロリデーション、フッ化物錠剤、ミルクフロリデーションなど)を2つ以上併用することは勧められません。バーゼル市は、水源、水の配給システムが複雑なこともあり、食塩フロリデーションを実施することに決められたのです。米国においては、フロリデーションの是非を問う住民投票が行われることがあり、時々住民投票で否決されることはあります。否決理由としては、基金不足、住民と専門家の無関心、論争が予測された時矢面に立つのを嫌う議員やリーダー達の態度、低い投票率、反対者による感情的な非難の中で有権者が科学的な情報を冷静に評価できなくなること等が挙げられています。韓国でも環境原理主義者の極端な主張による反対運動により、議員に動揺が起こり市議会でフッ化物購入費が削減され中止に追い込まれた例があります52)。しかし、米国歯科医師会(ADA)の調査では、地域のリーダーがフロリデーションの支持活動をしたことによって負の責任を負わされた事例はなく、フロリデーションによって何らかの健康被害が実証されたという理由で中止された例はありません51)。

E 水道水フロリデーションの経済性

質問 E-1 フロリデーションの費用対効果はどのくらいですか?

答え

一般に、水道水フロリデーションの年間一人当たり経費(以下、年間経費)は給水人口規模に比例し、規模が大きいと経費は安く、規模が小さいと経費が割高となっています。全米の実績から得られた年間経費の数値は、大規模例で約50セント(約42円)、使用小規模例で約3ドル(約250円)と推計されています53)。すなわち、水道水フロリデーションを生涯(80年)使用した場合の1人当りの費用は、歯1本の充填治療費と同程度と言えます。そして、米国での実績から、フロリデーション実施で1ドル投資することにより、平均38ドルの歯科治療費を軽減できたと報告されています。これがフロリデーションによる直接的な効果(直接利益)といわれています。また、むし歯予防の間接的利益として、歯痛からの開放、歯の喪失の減少、歯の喪失が原因の咬合不良症例の減少、歯根(根管)治療の必要な歯の減少、入れ歯とブリッジの必要性の減少、歯痛や歯科治療のために勉学や勤務に関わるべき時間が損なわれてしまうことを防ぐ、などがあげられます。正確にその利益を金銭に換算することは難しいことですが、直接利益に加えそれらの間接利益を考慮することも重要です。

質問 E-2 せっかくフッ化物を調整した水道水なのに、トイレ・洗濯・風呂など、いろいろなことに使ったらもったいなくないですか?

答え

 フロリデーションの水道水は普段と同じようにいろいろな日常生活に使用することを前提として、もっとも経済的なむし歯予防の方法です53)。フッ化物の薬剤代は年間一人当たり100円程度しかかからず、料金的にはわずかなものです。かたやフロリデーションのおかげで、数千円のむし歯の治療費が削減できること、また間接的利益を考えると、対費用効果は十分あります。ちなみに、フッ化物を利用したむし歯予防方法には、水道の他に、フッ化物洗口、フッ化物入り歯磨剤、フッ化物歯面塗布等ありますが、それらの中でもっとも費用が安く確かなむし歯予防効果のある方法は水道のフロリデーションです。

F 水道水フロリデーションの実践

質問 F-1 フロリデーションはどのような仕組みでフッ化物イオン濃度を調整するのですか?

答え

 水道水中のフッ化物を適正濃度に調整する方法は、塩素消毒と同じようにすべて浄水場で行われます。正確に稼働する注入ポンプ(メータリング・ポンプ)を用います。濾過などの浄水処理が済んだ後、主流管の流速に比例させてフッ化物液剤の注入添加が行われます。添加するフッ化物量を定量する方法の違いから、① [飽和溶液式](フッ化ナトリウム飽和溶液)、②[乾式](粉末状フッ化物)、及び③ [酸注入式](酸性フッ化物溶液)の 3方式があります。それらの方法は水道水の給水規模と経済性を考慮して使い分けられています。米国での実績から大まかに、給水人口が5,000人の小規模な地域には [飽和溶液式]、5,000人から50,000人の中規模な地域には[乾式]、そして50,000人以上の大規模な地域には [酸注入式]が用いられています。米国では [酸注入式]が最も広く使用されており、全フロリデーションシステムの約6割を占めています。なお、日本で高機能の飽和溶液作成装置が開発され54)、給水人口の小規模から10万人規模までの地域で、[飽和溶液式]の導入が可能となっています。この飽和溶液作成装置を使えば、既成の飽和溶液作成装置に比べより精度の高い濃度管理が可能となり、また、用いるフッ化ナトリウム飽和溶液は中性であるため、[酸注入方式]に比べ、浄水場での安全な作業管理が比較的容易にできる利点があります。

質問 F-2  フロリデーションに用いるフッ化ナトリウムは産業廃棄物から製造されるのですか?

答え

 産業廃棄物という用語は間違っています。むし歯予防の他の方法でも同じものですが、フロリデーションに用いるフッ化物はリン酸肥料の原料となる鉱物に含まれるミネラル成分を純化製造した副産物です55)。このように、ある製品の製造工程から得られる貴重な資源を有効利用することは、エコシステムの考え方に沿っています。同じようなエコシステムの実例として、オレンジジュースを生産する際にはさまざまな副産物が得られ、それらは洗浄剤、消毒剤、調味料、香料として使われています。他にも、豆腐作りから出るおから、精米時の米ぬかの利用も挙げられます。それらは環境に優しい生き方につながり、自然を大切にしてゆく賢い生活スタイルのひとつと言えます。

質問 F-3 水道水の消毒のために塩素を入れていますが、塩素は各戸の蛇口のところで基準値を満たすことが決められています。それによって浄水場に近い家は高濃度になりやすいと言われています。フッ化物も高濃度になりますか?

答え

 いったん適正濃度で調節した水道水中のフッ化物濃度は、時間がたっても変化することはなく、浄水場に近くでも遠くでも濃度は一定です56)。この点は消毒用の塩素と全く異なります。

質問 F-4 フロリデーション装置の事故が起きた時の対応はどうするのですか?

答え

 フロリデーション装置は予想される故障が生じたとしても水道水へフッ化物の供給が一方的に停止するような仕組みになっているので、水道水の使用はそのまま続けることができます。塩素消毒の場合は1日たりとも作業を中断することができませんが、フロリデーションの場合は数日装置が稼働しなくても、年間のむし歯予防効果が減ることはありません。事故は絶対に起こらないとは言えませんが、想定される範囲で二重三重に安全性の仕組みが工夫されています。これは浄水場で行われている他の多くの作業も同じことです。フッ化物イオン濃度のモニタリングは、配水地点と末端におけるフッ化物イオン濃度を人が毎日2回測定する方法と、最新の自働測定装置による24時間監視体制システムのいずれかの方法、または両方重ねた方法が採用されています。また、給水量から計算したフッ化物の使用量は1日当たりで用意されており、予想以外の事故が生じたとしても過剰のフッ化物を供給し続けることが無いようになっています57)。安全管理を守る上で消毒用の塩素添加よりフロリデーションの方が確実に容易です58)。

G 関連する基本情報

質問 G-1 テフロン加工の器具で調理するとフッ化物が溶出するって本当ですか?

答え

 料理する温度ではフッ化物は溶出しません。商標名でのテフロンは、ポリテトラフルオロエチレンあるいはそれに近い樹脂の総称で、フッ素原子と炭素原子の結合が連続的に結合した、フッ素化合物の一種です。その性状は、熱に強く、耐薬剤性のある比較的安定な物質です。また摩擦係数が低いことから、鍋やフライパンの焦げ付き防止などに使われています。このテフロン樹脂から常温でフッ化物イオンが溶け出すことはありません。料理に使用した場合、加熱による変化が考えられますが、料理に使用する条件では変化しないと言われています。一般に、油やバターは200℃で焦げはじめ煙を生じますが、テフロンは260℃まで安定です。350℃になると器具表面の変化が生じはじめます59)が、そもそもこのような温度で調理はできません。従って、空焚きをすると問題が生じますが、通常の料理ではフッ化物は溶出しません。

質問 G-2 成人や高齢者は(むし歯予防より)むしろ歯周病対策が重要ではありませんか?

答え

 むし歯(むし歯)は、子どもだけではなく、成人期以降も発生します。生涯を通じたむし歯予防が大切です。歯科疾患実態調査60)によれば、70-74歳で20本以上の歯を有する方の割合は、昭和62年には15.2%でしたが、平成17年には42.3%と大幅に増加しています。これからは高齢になっても自分の歯を有する方がますます増えていくものと予想されます。むし歯は子どもの病気という考え方も未だ一般的なようですが、成人期以降も、歯周病の進行により、歯根の周囲を満たしている歯肉が退縮していきます。このため、特に歯頚部(歯と歯ぐきの境)や、根面(歯の根の部分)でのむし歯の発生が顕著となります。わが国で70歳を対象とした調査61)によれば、それら未治療のむし歯は19.0%あり、治療済のむし歯は62.7%ありました。対象者の35.9%で2年間のうちに1歯以上の根面むし歯の発生が認められています。このように、高齢者でもむし歯が増加しており、生涯にわたる予防が必要である事がわかります。

質問 G-3 水道水そのものがまずくなったように感じるのですが、なぜなのでしょうか?

答え

 現在、水道水の水質はおいしく飲めるレベルになっているのですが、おいしさの感じ方は個人により違いますし、気温や水温、体調などの条件にも左右されます。環境庁(現環境省)資料62)によれば、水質環境基準健康項目(水質汚濁に係る環境基準のうち人の健康の保護に関する環境基準の定められている項目)の未達成地点の割合は、昭和46年当時に比較して格段に改善されており、水道水の品質についても同様です。水道水の原水が良くなっている理由として、埼玉大学教育学部化学研究室「飲料水と環境」から紹介します63)。「①河川に直接流れ込んでいた生活雑排水が、下水道の完備によって処理されている。②工場排水は国・県の規制によって格段にきれいになった。③農薬の毒性が大幅に低下し、分解性も上がった。④合成洗剤等も生分解性の高いものになった。⑤PCB等の難分解性の毒物が規制された。⑥水道の配管に鉛管が以前ほど使われなくなった等が考えられる。総合的にみると、水道水の原水は良くなっているように思われる」。東京都をはじめ多くの地域で、通常の沈殿・ろ過処理に加えて、高度浄水処理(オゾン・生物活性炭処理)された安全で美味しい水道水が供給されるようになってきました。

参考文献

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* 沖縄県歯科医師会・沖縄県具志川村:「フロリデーション問答集 久米島バージョン」,2002. は「フロリデーション問答集 久米島バージョン」とした。
* NPO法人日本むし歯予防フッ素推進会議編:フッ化物応用の過去・現在・未来,日本におけるフッ化物製剤(第8版),東京,2010. は「日本におけるフッ化物製剤」とした。

1) 質問 3 水道水フロリデーションとは何ですか?:「フロリデーション・ファクツ 2005」, 7-8頁.
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20) 質問16 家庭用浄水システムは、フロリデーションに影響しますか?:「フロリデーション・ファクツ 2005」,20頁.
21) 田口千恵子,山内里央,他:水道水処理器がフッ化物濃度に及ぼす影響について,日大口腔科学,32:43-48, 2006.
22) 質問32 フロリデーションが免疫反応に変化をもたらしたり、アレルギー反応を引き起こしたりすることがありますか?:「フロリデーション・ファクツ 2005」,37-38頁.
23) 質問17 フロリデーションは人の健康に悪影響を及ぼしますか?:「フロリデーション・ファクツ 2005」,21-22頁.
24) 質問39 フロリデーションは心臓病の直接原因や誘因になりますか?:「フロリデーション・ファクツ 2005」,42頁.
25) 質問40 フロリデーションは腎臓に有害ですか?:「フロリデーション・ファクツ 2005」,42-43頁.
26) 小林清吾:第5章 フッ化物の応用; 新予防歯科学 第4版(米満正美ほか編). 医歯薬出版, 東京, 2010. 89,90,104頁.
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30) 質問17 フロリデーションはヒトの健康に悪影響を及ぼしますか?:「フロリデーション・ファクツ 2005」,21-22頁.
31) Leone,N.C. et al: Amer J Roentgen, 74; 874, 1955.
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33) Levy SM, Kohout FJ, Guha-Chowdhury N, Kiritsy MC, Heilman JR, Wefel JS.: Infants' fluoride intake from drinking water alone, and from water added to formula, beverages,and food,J Dent Res (1995) 74:1399-407.
34) Osuji OO, Leake JL, Chipman ML, Nikiforuk G, Locker D, Levine: Risk factors for dental fluorosis in a fluoridated community, J Dent Res (1988) 67:1488-92.
35) Ophaug RH, Singer L, Harland BF: Dietary fluoride intake of 6-month and 2-year-old children in four dietary regions of the United States, Am J Clin Nutr (1985) 42:701-7.
36) Buzalaf MA, Granjeiro JM, Damante CA, de Ornelas F: Fluoride content of infant formulas prepared with deionized bottled mineral and fluoridated drinking water, ASDC J Dent Child (2001) 68:37-41, 10,
37) 磯崎篤則:第5章 フッ化物の毒性;日本口腔衛生学会 フッ化物応用委員会編,フッ化物応用の科学,口腔保健協会,東京,2010, 45-47.
38) 筒井昭仁: 米国の水道水フッ化物添加を中心としたフッ化物利用の歴史と現状 -う蝕,歯のフッ素症の状況に関するレビュー-. 口腔衛生会誌, 51: 2-19, 2001.
39) 筒井昭仁: フッ化物応用と公衆衛生. 保健医療科学, 52: 34-45, 2003.
40) 質問28 フロリデーションは癌の原因になったり、その増加を促進しますか?:「フロリデーション・ファクツ 2005」,35-36頁.
41) McDonagh M et al: A Systematic Review of Public Water Fluoridation, York University, 2000.
42) 質問35 フロリデーションはダウン症児の出生率を増加させますか?:「フロリデーション・ファクツ 2005」,39-40頁.
43) 質問49 フロリデーションは環境汚染につながりますか?:「フロリデーション・ファクツ 2005」,51頁.
44) 質問84 フロリデーションによって観光客が減少しますか? 質問85 フロリデーションは地域特産(豆腐、化粧水、酒、もずくなどの海産物)に悪影響がありますか?:沖縄県歯科医師会・沖縄県具志川村:フロリデーション問答集(久米島バージョン), 2002. 35-36頁.
45) WHO:Appropriate Use of Fluorides for Human Health, WHO, Geneva 1986, 45.
46) 質問52 どうしてフロリデーションへの反対が続くのですか?:「フロリデーション・ファクツ 2005」,54-58頁.
47) Covello VT, Allen F (1988). Seven Cardinal Rules of Risk Communication. US Environmental Protection Agency. Office of Policy Analysis. Washington. DC.
48) ナイルズ エルドリッジ (著), 渡辺 政隆 (翻訳) :進化論裁判,平河出版社,1992.
49) 瀧口徹:厚生行政の立場から21世紀の歯科保健を考える 特集・21世紀の地域歯科保健の展開. 公衆衛生,65(7):510-513,2001.
50) 質問120 フロリデーションが日本で普及してこなかった理由は何ですか?:「フロリデーション問答集 久米島バージョン」, 52頁.
51) 質問56 水道水フロリデーションへはヨーロッパで禁止されていますか?:「フロリデーション・ファクツ 2005」,62-63頁.
52) 「日本におけるフッ化物製剤」,58頁.
53) 質問57 水道水フロリデーションは費用対効果の高いむし歯予防方法ですか?:「フロリデーション・ファクツ 2005」,64-65頁.
54) 田口千恵子他:新型フッ化ナトリウム・サチュレータの開発,口腔衛生学会雑誌,57(4): 466, 2007.; 小林清吾:コミュニティ・ケアにおけるフッ化物応用プログラム-地方自治体におけるフロリデーション事業の展開(2)-,H19年度 厚生労働科学研究費 フッ化物応用による歯科疾患予防プログラムの構築と社会経済評価に関する総合的研究, 2008. 32-41頁.
55) 質問45 水道水フロリデーションに使われているフッ化物の原料は何ですか?:「フロリデーション・ファクツ 2005」,48頁.
56) 「日本におけるフッ化物製剤」,50-61頁.
57) 質問47 フロリデーションには技術上の難題が存在していますか?:「フロリデーション・ファクツ 2005」,49-50頁.
58) 質問46 フロリデーションは、水道システムや水道技術に対して特別な安全への配慮を必要としていますか?:「フロリデーション・ファクツ 2005」,49頁.
59) 日本弗素樹脂工業会 「しっていましたか? 弗素樹脂のこと」三井・デュポンフロロケミカルホームページ 「http://www.md-fluoro.co.jp/」
60) 厚生労働省 歯科疾患実態調査 平成11年,平成17年
61) 葭原明弘他:第8章 う蝕の疫学データ;う蝕学,永末書店,東京,2008, 228頁. 
62) 環境庁:水質環境基準健康項目,http://home.catv.ne.jp/rr/y-art/index.htm
63) 埼玉大学教育学部化学研究室:飲料水と環境,http://www.saitama-u.ac.jp/ashida/lecture/environ/suikankyo.htm

本書の作成について

1. 本問答集は、国内の幾つかの地域で行ってきた水道水フロリデーション普及啓発活動の中で、一般市民から出された疑問点を整理し、これらに答えることを目的に編集したものです。

2. 質問をされた方の意図をできるだけ大切にするため、多少類似した質問があっても、それぞれを別に質問項目としました。

3. 用語について、質問の段階で意味が通じるかぎり質問者の言葉を用いて回答しましたが、専門的に適正な用語を用いるように心がけました。

4. 回答文における用語は慣用語にとらわれず、無機科学命名法(IUPAC, 1990年勧告)にしたがい、例えば、わが国では慣用で、フッ素、フッ素イオンが用いられるところ、本書では、フッ化物、フッ化イオンとしました。また、水道水フッ素化は原語(Water Fluoridation)の意味を忠実に表現することを意図とし、水道水フッ化物濃度適正化(略:フロリデーション)としました。

5. 参考文献に関して、各質問項目について多くの科学文献が著者の手元にあるので、今後とも希望者には紹介したいと思います。

6.質問は以下の連絡先へ

執筆者一覧

監修・執筆
眞木 吉信 (日本口腔衛生学会・フッ化物応用員会 委員長:東京歯科大学)
小林 清吾 (日本口腔衛生学会・フッ化物応用員会 委員:日本大学松戸歯学部)
田浦 勝彦 (日本口腔衛生学会・フッ化物応用員会 委員:東北大学病院・歯科)

編集・執筆
荒川 浩久 (日本口腔衛生学会・フッ化物応用員会 委員:神奈川歯科大学)
飯島 洋一 (日本口腔衛生学会・フッ化物応用員会 委員:長崎大学大学院)
磯崎 篤則 (日本口腔衛生学会・フッ化物応用員会 委員:朝日大学歯学部)

執筆者
相田  潤 (東北大学大学院)
安藤 雄一 (国立保健医療科学院)
井下 英二 (大津健康福祉センター)
岩瀬 達雄 (佐賀県歯科医師会)
岩城 倫弘 (日本大学松戸歯学部)
榎田 中外 (静岡県歯科医師会)
大橋 たみえ (朝日大学歯学部)
木本 一成 (神奈川歯科大学)
佐久間汐子 (新潟大学歯学部)
佐藤 勤一 (秋田県歯科医師会)
互  亮子 (吉川歯科医師会)
田口千恵子 (日本大学松戸歯学部)
玉原  亨 (東北大学大学院)
筒井 昭仁 (福岡歯科大学)
鶴本 明久 (鶴見大学歯学部)
浪越 建男 (香川県歯科医師会)
晴佐久 悟 (福岡歯科大学)
平田 幸夫 (神奈川歯科大学)
藤野 悦男 (埼玉県歯科医師会)
古川 清香 (鶴見大学歯学部)
松尾 敏信 (長崎県歯科医師会)
南出  保 (北海道歯科医師会)
八木  稔 (新潟大学歯学部)
葭原 明弘 (新潟大学大学院)
山本 武夫 (富山県歯科医師会)